こんにちは、ほどほどに読書をする者です。
今回、ご紹介するのはシスターフッド小説です。
というか、今年たまたま読んだ本がほとんどシスターフッドもので個人的にびっくりしたのでまとめました。
そもそもシスターフッドって何ぞや……実は私もよくわかってないのです。
百合に興味が無い人生を歩んできました。(後から知りましたが、百合とシスターフッドを混合すると戦争が起きるようですね)なので無意識にそういう類を売りにしている書籍を読まずにいたのですが、今年になって今更「同志少女よ、敵を撃て」を読みました。読んでいる最中は全くそういった発想はなく「何があっても戦争はしてはいかんな……」という読後感想だったのですが本編後に付いていたアガサ・クリスティー賞受賞時の選評を読んでびっくり、「これシスターフッドものやったんかっっっ!!」
その時の私にとって、シスターフッドは百合という大きい範囲に含まれる1つの属性という認識を漠然と持っていたので驚いたのです。女性の仲間同士がお互いを思いやりながら助け合っていたら、それはシスターフッドになるのか? そう疑問に思いながら検索して調べた結果がこちらです。
コトバンク(https://kotobank.jp/word/%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%83%E3%83%89-839889)
なるほど。私が「同志少女よ、敵を撃て」を読んでシスターフッドだと思った点は上記の2でしたが、たしかに「同志少女よ、敵を撃て」の登場人物たちの成長過程に1、または姉妹に限定せず家族に近い間柄へと仲が進んでいく描写などはありました。
また、勝手にシスターフッド=百合と感じてましたが、そうでないことも以下で学びました。
シスターフッドとは、1960年代から70年代にかけての女性解放運動でよく使われた言葉で、男性優位の社会を変えるため、階級や人種、性的嗜好を超えて女性同士が連帯することを表すもの。
T, The New York Times Style Magazine: Japan(https://www.tjapan.jp/entertainment/17528215)
なるほど、歴史的背景を持つ言葉なのかー。そう納得して、いいお話だったと「同志少女よ、敵を撃て」を閉じたのですが、2023年も終わりかかっている今、今年読んだ本を思い返してみるとあれもこれもシスターフッドものなんじゃない??となり、せっかくなのでまとめてみるかが今回の記事です。めちゃくちゃ前置きが長くなりましたね。全部実際に読んで自信を持っておすすめするので、シスターフッド関係なく手に取って貰えたら嬉しいです!
おすすめ書籍一覧
同志少女よ、敵を撃て
あらすじ:独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?
「同志少女よ、敵を撃て」作者は逢坂冬馬さんで、アガサ・クリスティー賞や本屋大賞を受賞しています。
記事冒頭にも書きましたが、読むのが遅すぎましたね。
私は以前「戦争は女の顔をしていない」のコミカライズを読んだことがありました。その分、物語の情景を想像することがしやすかった点もありますが、作者はこの分野で研究でもしていたのかというぐらい背景描写含め当時の情報量がものすごいです。物語として、主人公セラフィマが他の登場人物に抱く印象が最初と後半で変化しており、その移り変わりも読んでいて面白かったです。
シスターフッドな点:この本に関しては全体がそう(ネタバレ回避難しい)。特にイリーナとセラフィマの関係やエピローグの内容がそういう印象を持つなぁと個人的に思いました。
グレイス・イヤー
あらすじ:「だれもグレイス・イヤーの話はしない。禁じられているからだ」ガーナー郡では、少女たちに“魔力”があると信じられている。男性を誘惑したり、妻たちを嫉妬に狂わせたりできるのだと。その“魔力”が開花する16歳を迎えた少女たちは、ガーナーの外に広がる森の奥のキャンプに一年間追放される。“魔力”を解き放ち、清らかな女性、そして妻となるために。この風習について語ることは禁じられていて、全員が無事に帰ってくる保障もない。16歳を迎えるティアニーは、妻としてではなく、自分の人生を生きることを望みながら、〈グレイス・イヤー〉に立ち向かう。キャンプではいったい何が? そして、魔力とは?生死をかけた通過儀礼が、始まる──。
「グレイス・イヤー」作者はキム・リゲットさんで、ハリウッドでの映画化が決定しています。読んだ人はわかると思うのですが独特な雰囲気からミッドサマーみたいな絵面が思い浮かびやすく映画化も納得、しかし個人的にはどうかホラーや猟奇売りにはして欲しくない。この物語自体はファンタジーですが、ここで語られる社会は実際の世の中でもある話だと、作者や訳者のあとがきでも強調されていますし、読了してそうだと思いました。面白いのですが、ひたすらに読んでいて辛いとこもあります。終盤、主人公ティアニーが「もうたくさん」と言うのですが、私も同じ気持ちだわ……と共感しました笑。活力がある時や私生活が順風満帆な時に読みましょう。
シスターフッドな点:主人公ティアニーと、彼女を支え続けるガーティーの関係ですね。正直、ティアニーは万人受けする主人公タイプの性格をしていません。現実にいても、10人中7人には厄介な子だと思われると思う。そんなティアニーを理解し、寄り添うガーティーがいい塩梅に魅力的なキャラです。また、一方的にティアニーが助けられるわけでもありません。相互扶助な良い関係です。
私はスカーレット 上/下
上のあらすじ:南北戦争期のアメリカ南部を舞台に、大農園のわがまま娘スカーレット・オハラが恋に破れ、愛のない結婚・出産をし、敗戦で何もかも失い困窮しながらも、持ち前の生命力で激動を生き抜く姿を、彼女の一人称で描くエンタメ一代記。
恋と戦争、仕事と友情、フェミニズム、波瀾万丈…全てアリ。スカーレットの激しさ、強さと可愛さ、ダイナミック過ぎる展開に、一度読み出したらページをめくる手が止まらない。今こそ読みたい極上エンタメ、怒濤の前篇。
「私はスカーレット 上/下」作者は林真理子さんで、世紀のベストセラー小説『風と共に去りぬ』を主人公の一人称視点で再構成されたものです。
私、「風と共に去りぬ」を知らない(読んだことない)状態で読みました。装丁がめっちゃ綺麗だったんですよ……はい、表紙ほいほいで手に取りました。こんな軽さで読み始めましたが、もう本当に面白い!一気に下まで駆け抜けました。そして改めて思う、「戦争したとこで誰も幸せにはなれない」と。主人公が本当に強い、最初からヒエラルキー的に強い女でしたが、精神的にも肉体的にも強くなっていきます。そして、この主人公の考え方は今の時代は尊敬されまくりでしょうけど、当時は生き辛かっただろうなと思います。唯一の理解者がレッド・バトラーですが、私の頭の中では終始「カズレーザー」でした。もし舞台することあったら、カズレーザー以外認めん。
シスターフッドな点:主人公スカーレットとメラニーに関係です。主人公はずっとメラニーが嫌いです。それは性格が真反対だとかもあるでしょうが、メラニーみたいな女が周囲にいたら私でも嫌いになるなーと思います。本当に非の打ちどころのない完璧な淑女なんですよ、メラニーは。そのため全くこの子の愚痴が言えないもどかしさ。現実にもメラニーにみたいな奴と、その存在をウザいと感じるが縁を切れないスカーレットのようなポジションの子いますよね。だけど、二人は二人で数々の困難を乗り越えるし、最後は思わず泣きました。
おちくぼ姫
あらすじ:貴族のお姫さまなのに意地悪い継母に育てられ、召使い同然、粗末な身なりで一日中縫い物をさせられている、おちくぼ姫と青年貴公子のラブ・ストーリー。千年も昔の日本で書かれた、王朝版シンデレラ物語。
「おちくぼ姫」作者は田辺聖子さんです。「おちくぼ物語」に関しては、古典の授業で聞いたかな?ぐらいの認識でした。本作は古典を現代風に書かれた内容になっており、非常に読みやすくさくさくと読了しました。それで、読んだ後に知ったのですが出版されたのが「1979年」、現代風の現代って親の世代やん!とびっくりしました。なんら違和感なく読めたのは作者さんの力ですね。最近では「とりかえばや物語」を題材にした漫画「とりかえ・ばや」が流行ったりしていました。この作品も平安時代の「結婚」を扱っているので生生しい箇所もありますが、純愛ではあるのでコミカライズしやすいと個人的には思います。というか、積極的にコミカライズして欲しいし、他の古典も現代風で読みたい!
シスターフッドな点:主人公のおちくぼ姫と彼女に使える女房の阿漕の関係です。もう二人は家族同然な付き合いなので、お互いのことが心配で心配でなりません。こういう観点でいくと他の侍従ものもシスターフッドになるのかな?と思いました。
儚い羊たちの祝宴
あらすじ:夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
「儚い羊たちの祝宴」作者は米澤穂信さんです。中身は短編集みたいな感じです。結構ガチな読書家の人なら楽しめそうな小ネタが随所に散らばっております。さて、帯にも書いてあるとおり大どんでん返しが売りなので、ネタバレしないためにもうシスターフッドな話書きます。
シスターフッドな点:本作の「身内に不幸がありまして」と「玉野五十鈴の誉れ」がこれにあたると思います。特に「玉野五十鈴の誉れ」は一番良かった。ミステリとしてもシスターフッドな描写的にも最高でした。ぜひ読んでみて欲しい。
今回は以上になります。
この記事を書いていてふと思ったのは、シスターフッドの男性版はなんていう括りなんだろう?ということです。
最近、森見登美彦さんの「熱帯」を読み終えたのですが、この中のネモと佐山の関係も何か言葉にできるのかな?と。まぁ、また次回追及したいと思います。では!
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